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「君もその一つなんだけど、わかってる?」
「えっ?」
不意に目線を私に向けて彼が言った。
「このカメラで君のことも撮りたい。そして、」
ーーーもっと知りたいんだ、君のこと。
その瞬間、穏やかな春の優しい風が私の頬を掠めながら吹き抜けて行くのを感じた。
目の前にいるのはまるで猫みたいな瞳とふわふわとした金色の髪を持つ彼。
私はちゃんと彼を見ると、
「岩崎……、岩崎 日和(いわさき ひより)です。宜しく。私も貴方のことが……とても知りたいです。」
照れながらもちゃんと彼の目を見て言った。
きっと間もなく何年かぶりに見るであろう桜が満開になる絵を想像しながら、私は漸く春を迎えようとしていた。
終
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