猫を追いかけて

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彼の父親はアメリカ人だと言う。彼の派手目な外見に納得いく。 そしてこの地で生まれ育った日本人である母親との間に彼は生まれた。 彼はカメラの仕事を一生やっていくためにここへ来たんだと言う。 アメリカの大都会で育った彼は斬新な被写体とアングルが話題となり、その世界では既に有名な人物だった。 名声も手にして財もその年齢にしてはかなり築いていた彼は、いつしか疲れていた。 体だけではなくむしろ、心が疲れきっていたという。 彼の才能を評価する人達は彼に「新進気鋭の彼」を求めたと言う。 見た瞬間、誰もが驚くようなものを撮れと、彼の名を知らしめる事となった斬新且つ奇抜なものを、求め続けた。 その結果、彼はカメラを置いてしまった。
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