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歌姫との出会いは、潮の香りがする小さな街の商店街にある、蕎麦屋とジーンズショップの間に、申し訳無さそうに佇む古惚けた楽器屋だった。
部活の先輩に五千円で無理矢理押し付けられたオンボロのアーティストモデルギターに、いよいよ愛想が尽きた僕は、母親に一世一代のおねだり大作戦を決行し、それが功を奏したのか、高校の入学祝いに念願のエレキギターを買って貰えることになった。
まずはおねだり大作戦の全容と、僕がギターを欲した理由から話そう。
天才は若くして死ぬ。今思えば笑っちゃうが、当時僕は死に憧れていて、カート・コバーンがショットガンをしゃぶったまま我慢出来ずに逝ってしまったように、シド・ヴィシャスがヘロインで幽体離脱したまま現世へ帰ってこなかったように、ランディ・ローズがジェット機で天国までフライトしたように、いつしか僕も若くして、そんな風にこの世を去ることになると勝手に思っていた。そんな死に憧れていた。
常にタカ派で、へそまがりで、クラスのみんなが知らない、そんな死んでしまったヒーローたちに焦がれて止まないこの僕が、彼らとまた同じように、肩を並べるかの如く、楽器を携えステージに立つのは必然なのだと信じていた。
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