贅肉の繭に包まれて。

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 水曜の夜。安いプライドと、そこそこのブランドで精一杯のお洒落をして彼氏との食事。  コース料理をペロリと平らげ、「美味しいもの大好き」と、可愛く言ってみせるわたし。まあ、結局は、会計時にお手洗いで、盛大に全て便器に吐き出すのだけれども。消化が始まるまでに、吐き出すのが、淑女の嗜みである。  何でもかんでも吐き出して、満たされることのないわたしは、常に貪欲になれるのだ。  シャワーを浴びる前の洗面所で一回、ジャグジーの在るバスルームで一回、キングサイズのベッドで一回、少し眠ってもう一回。これは、その夜わたしと彼が身体を重ねた回数である。彼はわたしの身体に優しく触れるが、心に触れようとはしない。気持ちばかりが過敏になって、心の方は不感症であった。まるで自傷行為のようなセックス。処女を無くした、あの忌々しい痛みさえも恋しかった。  水曜日はカレーの日なのにな。どうせ食べるならカレーが良かったな。  腰を動かす彼氏の腕に抱かれながら、わたしはそんなことをぼんやり考えていた。この彼氏とは、もう別れよう。ああ、繭が、繭が、膨らんでいく。
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