贅肉の繭に包まれて。

18/27
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
 彼は人の話を訊くのが上手で、初めは音とお酒の好きな男の子たち。次第にそんな優しい彼にたかるフライガールたち。考えもしなかったが、彼は一般的に見ても、すらっとしてカッコ良いのだ。  群れとなった一群は人を増やし、彼は様々な人の話を訊いた。世間話。悩み。悪口。彼に話したい人は、増えていき、わたしは中々自分の順番が回ってこなくなった。そんな風に思っている自分が、知らぬ間に彼の下に立っているようで悔しかった。  吐き出し口の無くなったわたしの躰には、少しずつ傷が増えていく。最初はピアスを開けた。沢山開けた。次に刺青を入れた。幾つも入れた。これらさえ自傷行為なのだと薄々気付いていた。  そんなわたしの気持ちも知らずに、彼は誰の話でも訊いた。悪口だって訊いた。わたしの悪口だって丁寧に訊いた。そして次第にわたしの悪口を言うようになっていった。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!