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ならばいっそ可憐に宙を舞おうか。
月の綺麗な晩であった。荒れた部屋が酷く臭って窓を開け、逃げ出た自宅マンションのバルコニー。風が仄かに頬を擽る。
時間の感覚はめっきり無くなったが、昼間は暑く、夜は寒いくらいの季節である。
薄手のカーディガンの裾が、蝶の羽根のよう、風でひらひら羽ばたく。
どうやら、わたしは躰だけ痩せて、別のものを酷く太らせていたことに気付かなかったようだ。肥えて、ぶよぶよで、こんなにも醜くなってしまった。
今宵は月がこんなにも綺麗だから、わたしのような醜い蛾は、その光に集るのでしょう。
どうか、ご機嫌よう。もしも命が繰り返すならば、それはそれは綺麗な蝶に生まれ変わって、誰かの視界の中を飛べますように。
バルコニーの柵を越えたところで強い風が吹き、まるで恋に落ちるよう、引力に惹かれた地面が、わたしをぐしゃりと踏み潰した。
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