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「俺さ、今でも後悔しているんだ。高校の時、お前を泣かせた奴らを、なんで殺さなかったんだろって。口先だけ慰めて、何もしない自分が嫌だった」
「今更そんなに昔の話?」
「それどころか、その話を訊いた俺は、嫌らしいことを考えたんだ。いつか俺もそんな風にお前を抱けるのかなって」
あの夜、千明はわたしを抱いた。一度壊れたものは、もう二度とは元に戻らない。失ったものは、とてつも無く大きい。
芝生沿いにあるヘリポートから、ドクターヘリが一機飛び立とうとしている。そのプロペラ回るヘリ風に、わたしたち二人の髪が靡く。
マンションの四階から飛び降りたあの時、わたしの持つ、ちっぽけな価値観やプライドは自殺した。清々しい気持ちである反面、執着が無くなってしまい、千明という存在の謎は迷宮入りとなった。もうわたしは空っぽなのだ。
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