21人が本棚に入れています
本棚に追加
「よおし、八人来るよ。店長、分かってるね」
「あ、えっと、はい」
「勝負の続きをしようじゃないか。俺は運命の、聖戦パートナーがいたら叫ぶ」
「私は、受と攻を瞬時に見破る」
「え、そんなルールでしたっけ?」
この美波と堕天使は何を言ってるの?
と本気で分からなかったが、お兄様と彼氏の甲子園に行かない系かっちゃんがいるので怖くて聞けなかった。
要は、八人全員にあいさつをすればいい。ただそれだけのこと。
いらっしゃいませの『せ』を空間に置くだけでいい。
そっと置くだけで、あたかも最初から言ったように聞こえるはずだ。
最初に芋を引いた奴が負けのルール。絶対に負けられない戦いがそこにあった。
大切な恋人が、兄とデキていたと、喜んでいいのか、腐女子の性(さが)に贖うことができなかった、一番くじのために日曜にバイトを入れていた、美波。
聖戦の傷をすべて請け負い、平和になった今も一人孤独と戦い、その身に罪を背負いつつも今宵も第二次聖戦を乗り切れるパートナーを探す、山田。
ただ『いらっしゃいませ』と『ありがとうございました』をゲシュタルト崩壊するまで唱えてきた店長(38)は、簡易魔法に挑戦したい。
そんな三人が、今――コンビニの入り口を睨みつけた。
肉まんももう解凍できている。そんな短くもあり長くもある時間だった。
「ああ、奴らだ」
ザッと砂埃が舞う。
まさか。駅からこのコンビニまで30分、それを走ってきたのか。
「おーし、よく来たな」
一旦、美波の兄が外に出て手を振る。
最初のコメントを投稿しよう!