第2章 父と子

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あの土肥という子が噂通りに新聞部顧問の先生のことが好きだとして、なぜ俺が絡まれなければいけないのかさっぱり結び付かない。 女の子が考えていることが、わからない。 夏鈴のことならわかるのに、夏鈴以外の女が考えていることが全くわからない。 本当にわからないのか、わかろうとしていない方なのか、どっちなのかもわからずに、俺はカーステレオのボリュームを上げて音楽に心を投じた。 時速80キロで無料高速道路に進入するとアクセルを踏み込んで走っていく。 俺を待ってくれている可愛い妻の元に一分一秒でも早く帰りたくて。 二車線が終わる前にちんたら速度で走る軽自動車を追い越して割り込むと、先頭を走る格好になった。一時的に時速100キロを超えていたから、エンジンブレーキを使って速度を落とそうとした時。タコメーターに視線を落としてから前方へと戻る瞬間に、突如横から飛び出した鹿の顔がフロントガラスにぶつかってきた。 そこから何がどうなったのかは、覚えていない。 回転しながらやっと停止した車の中で、俺は頭を打ってそのまま気を失っていたから・・・
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