第2章 父と子

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気付いたら、救急車の中にいた。 白ヘルメットをかぶった救急救命士が、おれを見て何か言っているけどすぐには言葉が理解できなかった。 車が大破して、轢いた鹿の遺体が転がっていた。 急ブレーキを踏んだらしく、真っ黒いタイヤ痕が道路を斜めに横切っていた。 車は・・・フロントガラスが割れていて、バンパーがくっきりと窪んでいた。 「名前はわかりますか?」 やっと言葉に意味があるのだという感覚が戻ってきた。耳鳴りの中に意味のある単語が理解できすると、とても安心する。 「東海林・・・晴馬」 それから色々と聞かれて、家族を呼ぶと言われて、俺は自宅の電話番号を教えた。 救急車は今来た道を戻って市立病院に行くと説明される。 寝ているし、あちこち痺れているせいで、自分がどの程度の怪我をしているのかわからないまま、俺は初めて救急車で搬送された。 救急入口から運ばれてすぐにハサミで衣服を着られて病院着を被せられながら、レントゲン撮影をされた。マスクをした目しか出してない医療機関の連中に何度も名前と生年月日を聴かれ、答える。
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