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睡魔がやってくると、俺はうっすらと意識を手放した。揺らぐような感覚に身を任せて、次に気付いたら病室のベッドにいた。
俺の手元に夏鈴の頭が転がっていて、目は閉じられていた。
繋いだ手に指輪を見つけて、俺はそこにキスがしたくなった。
夏鈴の手を引き寄せて指や甲にキスをして、それから舌で舐めてみると、やっと目覚めた彼女が涙ぐんだ。
「晴馬!!」と、小声で叫びながら抱き着かれる。
夏鈴のシャンプーの香を吸い込んで、首筋に鼻を埋めた。やっと、ホッとする。
「心臓に悪い!!」
「ごめん」
「もう・・・すっごく怖かったぁ」
「俺も・・・怖かった」
「そうだよね・・・でも、良かった・・・大したことなくてよかった」
俺達はしばらく抱きしめ合って泣いていた。
夏鈴はなぜかケーキの箱を手に持っていた。
爺さんの軽トラで送ってもらった時にふとチーズケーキとシュートケーキを買わなくちゃと思った、って言うんだ。俺が買ったやつはたぶん車の中にまだあるかな。潰れてる可能性が高い。
さすが、俺の奥さんはシックスセンスが冴えている。
「今日、晴馬が事故に遭うなんてわからなかった」とふくれっ面で言い訳した。夏鈴は悪くないのに、凄く申し訳なさそうで可愛い。
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