第2章 父と子

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「夏鈴」 「晴馬」 「夏鈴を残して、死にたくない」 口から勝手に飛び出した言葉に、また震えた。 夏鈴も、雷に打たれたような顔をして唇にキスをしてきた。 涙混じりのキスは、どちらの涙かわからないが少ししょっぱい。 心臓がドクドク脈打って苦しい。 身体が痛いのも、首を曲げると辛いのも、夏鈴の身体の感触も、キスができているのも、全部俺が死ななかったから感じられることだ。 死ななかった。 生きてる。 夏鈴とまだ生きていける。 不意に両親のこと、夏鈴の親父さんのことが頭を過った。 俺は彼らが出来ないことが、まだ出来る。 出来るうちにやりたいことが出来るんだ。 命拾いした幸運に感謝した。
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