3人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
エレベーターの定員
会社に意地悪な先輩がいる。
表立って罵ってはこないけれど、仕事に必要な報告を忘れたフリでしなかっり、書類をゴミと間違えたフリで捨てようとしたり、あれこれ嫌がらせに余念がない。
中でも出勤時に多いのがエレベーターでの嫌がらせで、先輩は必要もないのに早めに来て、エレベーターホールでスマホを弄るふりをしている。そして私が現れるなりエレベーターに乗り、さっさと扉を閉めて八階のオフィスフロアへ向かうのだ。
エレベーターは一基しかないから、往復を待たされるのは地味にイラつく。だから抗議したこともあるけれど、気のせいと言われたり、後輩にくせに来るのが遅いとか、話を違う方向に持っていかれたこともあった。
だからエレベーターに関しては、もうそういうものだと思って使用していたが、その朝は勝手が違っていた。
いつものように出社すると、こちらもいつも通り、先輩がエレベーターの前にいるのが見えた。でも、上階から降りてきたエレベーターには、文字通り溢れそうな人数の人が乗っていたのだ。
今朝に限って、どうしてこんなにたくさんの人が上の階から降りてくるのか。呆気にとられる私を尻目に先輩がエレベーターに乗ろうとする。でも、上から来た人達は何故か誰一人として降りないから、当然というか案の定というか、定員オーバーのブザーが鳴った。
これではエレベーターは動かない。だから見送るべきだ。そう言おうとした瞬間、何故かブザーの音が消え、エレベーターの扉が閉まった。
最初のコメントを投稿しよう!