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とりあえず喉の渇きがなくなればいいという注文に応えるために、グラスに冷えた麦茶を注ぐ。自分の分をまず飲んで、おなじグラスに麦茶を足して卓弘に持っていく。こうしたら洗うのはひとつで済むだろうって、前に卓弘に言われてからそうしている。卓弘はけっこうな面倒くさがりだ。
「ほい」
「ん」
グラスを差し出すと、卓弘は首を伸ばして目を閉じて、口を半開きにした。
「流し込んだら、むせるんじゃね?」
「むせないように飲ませろよ」
ニヤリとしながら薄目を開けた卓弘に、ドキリとする。
「しかたねぇなぁ」
あきれてみせても顔が熱いから、僕の心は卓弘にモロバレしてる。
麦茶を口に含んで、そっと卓弘の薄い唇に僕の唇を押しつけて、流し込んだ。
「ん……んんっ、んぅうっ?!」
ぜんぶ飲ませたら後頭部をわしづかまれた。かと思うと卓弘の舌が僕の口内に入り込んで、好き勝手に暴れはじめる。
口内を蹂躙されながら、グラスを落としちゃいけないとがんばる僕を、卓弘は愉快そうに目を光らせて観察している。
その目はズルいと思いつつ、卓弘の舌に応えながら膝をついて顔の高さを近くした。
「ふっ……んっ、ん……んぅっ、う……はぁ、んっ」
僕から水分を奪いたがっているんじゃないか。
そう思うくらい卓弘のキスは執拗で、深くて、激しくて。湿度と気温とは違う熱が、僕に汗をかかせる。
「んっ、たくひ……っふ」
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