猫の嫁取り

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 もうそろそろやめてくれと、言いたいのに言えないのは卓弘が唇を開放してくれないからじゃなくて、本心ではキスをやめたくないからだ。だけど、やめてほしいフリはする。そういう僕を卓弘は見透かしていて、いたずらっぽく目の奥を光らせると、Tシャツの中に手を入れてきた。 「んっ、ぁ……卓弘……っ、う、ん」  飲みきれなかった唾液が口の端から流れて、顎を伝う。それを追いかけた卓弘の唇は、めくられたTシャツの下に移動した。鎖骨に歯を立てられて、強く吸われて、卓弘の痕をつけられる。薄着の季節はあまり痕をつけるなって、何度言っても卓弘は聞いてくれない。  自分の好きなように、つけたい場所に卓弘のしるしを残す。  迷惑なのにうれしくて、僕は強く卓弘を叱れない。卓弘はそれをわかっていて、僕が本気で怒らないギリギリのラインを攻めてくる。 「あ、ぁ……卓弘」  チロリと舌先が、卓弘に吸われなくても赤い場所に触れた。チュクチュクと唇で甘えられて、ジンワリと甘い痺れが生まれて広がる。触れられていない場所が――意識とは関係なく反応をしてしまう場所の根元がムズムズしはじめると、触っていないのに卓弘はそれを察知し意地の悪い顔をする。  その顔がどうしようもなく愛おしくて、僕の胸と欲望に素直な部分がドクンと脈打った。 「っ、卓弘……も、やめ……麦茶こぼれる」 「こぼさないように注意しとけばいいだろ?」  しれっとそんなことを言う。卓弘に触れられた僕がどうなるか、なにもかも知っているくせに。     
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