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「汗くさいだろ」
「幸助で塩分とミネラル補給」
「できるわけ、ねぇだろっ」
冗談めかして頭を軽く叩いてやると、笑った目のままムウッと唇を尖らせる。
ああ、好きだ――。
どうしようもなく、卓弘が好きだ。
この情動を卓弘は僕に与え続ける。それが怖くて幸せで、どうしようもなく卓弘から離れられないんだと思い知らされる。
「幸助」
甘えた声で呼ばれると、もういけない。僕は卓弘にすべてを許してしまう。
「ったく。このクソ暑いのに、よくシたくなるよな」
悪態をつきながらグラスの麦茶を飲み干して床に置くと、卓弘はニンマリしながら僕を押し倒した。
硬い床はすこしも冷たくなくて、艶っぽく見下ろしてくる卓弘の瞳が熱くて、これから僕は卓弘に愛されるのだと認識すると鼻の奥がツンとした。
「えっ」
卓弘の目がまんまるになる。
「えっ」
僕も驚いて目を見開いた。
目じりから耳へと、重力に従って液体が流れていく。
眉間にシワを寄せた卓弘が僕を観察している。僕はまっすぐに、その視線を受け止める。
卓弘の唇が目じりに落ちて、舌で涙をぬぐわれた。
「本気のやめろじゃないって、思った」
ためらいがちな謝罪を含んだ声音に、うんと僕は首を動かす。
「卓弘」
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