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「ここでいいわ。ありがとう、送ってもらって。」
辺りもすっかり暗くなったことから平岩結人は牧野一美を彼女の自宅近くまで送り届けてやった。
しかしそれは決して紳士的な気持ちからの行動と言う訳ではなく、もし自分と別れた後、一美に何かあろうものなら自分自身バツが悪くなる。
ただ単にそれを回避したいと言う思いからの行動だった。
「それじゃあ。」
そう言って立ち去ろうとする結人の制服の袖を一美はグッと引っ張った。
「ん?」
と振り替えると一美の柔らかなそれが結人の唇に重なった。
唇は一瞬で離れて行き、
「私ね、もしかしたらなんだけど……貴方なら好きになれるかもしれないわ。」
牧野一美が言った。
「貴方だって私と付き合えば何かとメリットはあるでしょ?貴方なら私と並んでも釣り合いそうだし?周りの人達はきっと羨ましがるわ。なんてお似合いの二人なんだって。だけどごめんなさい、本気にしないでね。ただそう思っただけだから。深く受け取らないで。」
一方的に言いたい事を言うと軽やかに制服の裾をひらりと揺らしながら一美は自宅へ向かった。
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