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「あら、兄さんだけには言われたく無いわ。」
万由香は結人の唇にわざとらしくチュッとリップ音を立てながら再び口付けると渋々カウンターの中へと入っていった。
そして結人の為にアイスコーヒーをグラスに注ぎそのままカウンターに座る結人の前に置いてやる。
ストローもシロップも何もつけないのは結人が使わないのを知ってのことだ。
「俺は間もなく精算するさ。そろそろ潮時なのも
優秀な女子高生はよく理解しているからね。」
「どうでも良いけど、注文くらいしなさいよ。」
万由香は兄である秋川秀に露骨に嫌悪感を露にしながらも一先ずおしぼりを差し出した。
「開店前だというのにこの店は注文とるのか?表の札はまだ準備中だったけど。」
「そうよ。兄さんが来なかったら今日は臨時休業して愛しのダーリンとgo to the bed?なのに邪魔するからよ。」
やたらと良い発音で言う万由香に
「お前、やっぱり英語の教師になればよかったのに。」
その一瞬だけ、秋川秀は兄の顔で言った。
二人のやり取りを黙って見ていた平岩結人はアイスコーヒーを一気に飲み干すと
「一度帰って着替えてくる。」
恋人である万由香に告げ店を後にした。
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