第1章 思い

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「おばあちゃんをサイパンに 連れていってあげたいの。」 ノートを読み終えた圭ちゃんに 私は真剣な眼差しで訴えた。 「圭ちゃんがハワイのプランを いろいろと探してくれたのはわかってる。 それなのに本当にごめんなさい。 サイパンのツアーは私が探すから。 キャンセル料も全部私が払う。 お願いします。どうかサイパンに 行かせてください。」 私は床に額をつけて土下座をした。 圭ちゃんはきっと苦虫を噛み潰したような 顔で私を見下ろしているだろう。 せっかくのハネムーンなのに。 そう思ってるかもしれないし、 そう思われても仕方がない。 これは私のワガママだ。 でも、どうしても行きたいのだ。 祖父が最期を遂げた南の島に。 「わかったよ。だから頭を上げろよ。」 予想に反して、圭ちゃんの声は とても穏やかだった。 そしてやっとビールを開けて、 ゴクゴクッと喉を鳴らして飲む。 「ほんと?いいの?」 「いいよ。要は静波の行きたい所に 行ければいいわけだし。」 「圭ちゃん、ありがとうぉ!」 私は嬉しくて、 思わず圭ちゃんに抱きついた。 「わっ!こら!溢れるって。」 圭ちゃんは慌ててビールをテーブルに置いた。 「ただ俺、今は本当に忙しくて 手が回らないから、キャンセルとか ツアーを探すのは頼むな。」 私は満面の笑顔で大きく頷いた。 「もちろん、任せといて!」
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