第1章 思い

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とは言ったものの、年末年始のツアーを 12月初めに予約するのは至難の技だ。 内容がどうでもいいならいくらでもあるが、 一応ハネムーンなので少しくらいは選びたい。 ちなみにキャンセル料は たいしてかからずに済んだ。 「なかなかいいのがないなぁ。」 インターネットや仕事帰りに 旅行会社から貰って来たパンフレットを 見ても、ファミリー向けのものばかりで 気に入る内容のものが見つからない。 ここ最近はハネムーンでサイパンを 訪れる人が少ないのかもしれない。 「ただいま。」 22時を回った頃、圭ちゃんが帰って来た。 残業はしばらく続くようだ。 「おかえり。ご飯は?」 「軽くは食べたけど、できれば何か 食べたい。」 「すぐ用意するね。」 「よろしく。」 圭ちゃんは私がテーブルに広げた パンフレットに目を止めた。 「いいツアーあった?」 「それが、なかなかないんだよね。」 「だろうと思った。ほら。」 圭ちゃんがA4サイズの封筒を 差し出した。 「何?」 私は中を見た。サイパンツアーの パンフレットだった。 「圭ちゃん、これ・・・。」 「あらゆるコネを使ってみた。 ホテルも結構いいとこ取れたからさ。 静波が気にいるかわからないけど、 まず見てみろよ。」 嬉しくて涙が出そうになった。 圭ちゃんはいつもさりげなく 私の為に頑張ってくれる。 「気に入らないはずがないよ。 ありがとう、圭ちゃん。」 「うん・・・着替えてくる。」 圭ちゃんは照れた顔を見られたくなかったのか、 足早に寝室へ入っていった。
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