第2章 南の島へ

2/19

28人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
「えーと、なぜは・・・Whyだっけ?」 私がモゴモゴしてる間にも 少年は早口で何か必死に話してる。 こうなるともうわからない。 「No thanks. Sorry.」 圭ちゃんが少年の手を引き離し、 私の手を取って走り出した。 少年は追っては来なかった。 「ここまで来れば大丈夫だろ。」 8thアベニューからベルタワーへ向かう 道を曲がった所で、少し息を切らせながら 圭ちゃんは言った。 「あの子、何が言いたかったんだろう? 圭ちゃん、わかったの?」 「全然。でも物売りか、 写真を売りつける気だったのかも。」 「でも何も持ってなかったよ?」 「そうだけどさ。 気をつけるに越したことはないよ。 ここは日本じゃないんだから。」 確かに圭ちゃんの言う通りだ。 気をつけなきゃと反省する。 それから私達はベルタワーを見て、 レンタルバイクでまず北部を回った。 明るい日差しの下にあるのは、 殆どが戦争に関わる遺跡だった。 この島の光と影を感じながら、 私はずっと考えていた。 託されたおばあちゃんの形見を どこに遺すのが一番いいのか、と。 サイパンかテニアン島。 多分、祖父はどちらかの島に眠っている。 生きて会うことは叶わなかったが、 せめて祖父のなるべく近くに 祖母が大切にしていた形見を 届けてあげたかった。 その為に私はここに来た。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加