第2章 南の島へ

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そのベットに座り、こちらを見ているのは 少年と同じく現地の人と思われる 初老の男性。 ひどく驚いているのか、 大きく目を見開いている。 「Oh my god・・・It' a miracle!」 彼の唇がそう動いたように見えた。 初老の男性は英語でお礼を言いながら 少年の頭を撫でた。 少年はくすぐったそうな顔をした。 さて、私達はどうしたものか。 看護士さんか誰か、 通訳をお願いできる人はいるだろうか? 私も圭ちゃんも病室の出入口に佇んで そんな事を考えていた。 「こんにちは。よく来てくれました。」 不意に流暢な日本語で声を掛けられて、 私達は面食らう。 初老の男性は穏やかな声で続けた。 「私はこの島が日本に統治されてる時に 日本語を学びました。普通の会話なら 問題ありません。どうぞお入り下さい。」 「あ、はい・・・お邪魔します。」 何だか間の抜けた挨拶をしながら、 私達はベットに近づいた。 病室内は他に誰もおらず、 とても静かだった。 「私はウナイ、この子は孫のチューロです。」 ウナイはチューロの頭をポンポンと 撫でながら紹介をした。 私達もまずは名乗らなければ。 「私は佐山 静波・・・ 旧姓は河野、河野 静波です。 彼は夫の佐山 圭です。」 圭ちゃんが頭を下げる。 ウナイは感嘆の声を漏らした。 「おお・・・コウノと言うことは やはりショウイチロウの・・・。」 「尚一郎は私の祖父です。 祖父のことを知っているんですね?」 私は思わずベットの柵を掴み、 身を乗り出した。 「はい・・・知っています。」 「なぜ静波が尚一郎さんの関係者だと わかったんですか?」 圭ちゃんが当然の質問をする。 「それは、これのお陰です。」 ウナイはベット脇の机の引き出しから 取り出した物を私に手渡した。
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