第2章 南の島へ

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小さな紙の上に乗せられた金色の丸い塊。 ネックレスのような鎖がそこから 垂れ下がっている。 私は息を呑んだ。 それは一枚の写真と金色の懐中時計。 白黒の写真は両端がしわくちゃになり、 懐中時計の形に折り目がついていた。 白っぽく色褪せていたり、 茶褐色に変色しているところもある。 それでもすぐにわかった。 赤ん坊を抱いた女性は私によく似た、 いや、私がよく似た若い頃の祖母だった。 その隣にスーツを着て佇む祖父。 祖父が愛おしそうに抱いているのは父だ。 幸せそうな祖父母の笑顔。 例え僅かな時間でも、 こんな笑顔で過ごせた日々もあったのだと思うと、 少しだけ救われた気分になる。 次に私はそっと懐中時計を裏返してみた。 背面いっぱいにカタカナで刻まれた名前。 ショウイチロウ、タエ、ナオヤ、サチヨ。 紛れもなく祖父の大切な懐中時計だった。 「まさかこれらを直接お返しできる日が 来るとは。奇跡としかいいようがない。」 ウナイが言う通り、これは奇跡だ。 こんな奇跡が自分の身に起きるなんて 思いもしなかった。 私は写真と懐中時計をそっと両手で包んだ。 涙が溢れそうになる。 それを必死に堪えながら、 ウナイに懇願した。 「ウナイさん、お願いです。 どんなことでも構いません。 祖父の話を聞かせてもらえませんか?」 ウナイはゆっくりと頷いた。 「もちろんです。その為にあなた達に ここへ来てもらったのですから。」 気づくとチューロがどこからか 椅子を2脚持ってきてくれた。 私と圭ちゃんはお礼を言って腰を下ろした。 チューロはニッコリと笑って頷き、 ウナイのベットの足元の方に座った。
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