第2章 南の島へ

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隣に佇むチューロを見ると、 私達の真似をして、ぎっちりと目を瞑り 手を合わせた格好のまま動かない。 「Thank you.」 圭ちゃんが笑いながら チューロの髪をクシャッと撫でた。 チューロは目を開けるや否や 「Follow me !」と言いながら駆け出し、 鳥居をくぐって更に上へと行ってしまった。 やれやれ、また登るのね。 私と圭ちゃんは苦笑いを浮かべて、 チューロの後に続いた。 先程よりも幅の広い石段を登って シーサーの間を通り、 白くて小さな祠の前に立った。 まだ真新しく見える祠は、 戦後に建て直されたものらしい。 私達は3人で静かに手を合わせた。 チューロの合掌姿もさっきよりは サマになっている。 その後も私と圭ちゃんは、 まだ行っていない島の南部を チューロと歩いた。 南部には建物もなく、カロリナス台地と 呼ばれる見渡す限りの平原が広がっている。 そこは生き残った数少ない日本兵や民間人が 玉砕し、テニアン島の戦いが終わった 場所でもある。 多くの人々が自決したシーサイドクリフは カロリナス台地の東に位置する。 この島に残る戦争の傷痕に触れる度、 胸が締めつけられるような痛みに苛まれた。 起きてしまった悲しみを 消すことはできない。 しかし現在を生きる私達がその痛みを感じ、 未来への平和の努力を怠らなければ、 過去に多くの人々が流した涙も 少しは報われるのかもしれない。
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