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「あと、夏のライブのチケット」
「あー、関係者チケットだったから?」
「あのライブの関係者は、メンバーの家族だけ」
「え! そうだったの?」
「だから、まちがいないって」
大和がふわりと笑った。そんなことを兄はひとことも言っていなかった。
「言いそびれただけなんだ。隠すつもりはなかった。でもそれなら、聞いてくれてもよかったのに」
「なんか英明、言いたくなさそうだった」
その大和の言葉に自分自身を振り返る。確かに言おうと思えばいつでも言えた。けれど、言えなかったのは、きっと大和がリョウのことが好きだったから、それで気を引きたくなかったのだと思う。今、思えばとライブのときに大和がかけてくれた「よかったね」という言葉は、自分がリョウの弟だとわかっててのことだったのだとしみじみ感じた。
大和は、英明が思っているよりもずっと大人のような気がした。
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