博士とアモル

2/4
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
 その部屋は薄暗く、ただ四方を一枚のドアとコンクリートの壁が囲んでいた。天井中央に吊るされている小さなライトの光を浴びていたのは、真っ白なベッドに眠る白い顔の中年女性。そして、椅子に座りむせび泣く白衣を着た白髪頭の中年男性。 『博士』  ドアが開いた音の後、無機質な声がすると、白銀の物体が暗闇の中から浮かび上がった。 『ご遺体は既に死後硬直が解かれ腐敗が始まっております。速やかに処理される事を勧告いたします』  その感情の込もっていない合成音声の主に、中年男性は真っ赤に充血した目をキッと向けた。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!