博士とアモル

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「処理じゃと? “アモル”よ。今ベッドの上に横たわっておるのは獣でも魚でもましてやロボットでもない。ワシの妻じゃ。35年と6ヶ月と14日、苦楽を共にした掛け替えの無い存在じゃ」 『ですが奥様の生体反応は既に消失しております。いつまでも放置しておく必要性は無いと判断します』  再びベッドの妻に視線をやり、中年男性は力無い声で答えた。 「そう……。ワシはこいつを救えなかった。科学者であると同時に医療に関してもそこらの医者より知識のあるワシでも、ロボットのように治してやる事ができなかった」 『奥様は現代の医療技術では治療不可能な不治の病でした。奥様も生前、助からないと覚悟しておりました。よって気に病む必要は無いと進言いたします』  今度は椅子を倒す勢いで立ち上がると、怒りを秘めた剣幕でアモルと呼んだ物体に詰め寄った。
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