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彼は骨董品をじっと見てるだけ。買うわけでも無い。見たいだけなんだろうか。でもここは、芸術品を置いている展示場じゃ無いんだけど。
言えやしないから、別に良いんだけど。見てるだけでも。
僕は彼のことが気になって、じっと骨董品を見てる彼を目で追ってしまうけれど。
彼と視線が合ったことは無い。彼は僕には興味は無いんだろう。興味が有るのはきっと骨董品で。いつかお金を貯めて買う気でいるのかもしれない。
父と母が海外を回って入手して来る物には、視線を向けないから、きっとそれが一番当たってるだろうと、僕は推測している。
「いつか買うつもりが有るお品が有りましたら、取っておきますよ」
とか言うのが、ここの主人としての正しい在り方かもしれないけれど。
僕は声をかけるのも、面倒だから。
というか、本当にただ見ているだけで満足している人だったら、僕のその言葉は、買う気が無いなら来るなと言っている様なものになる。
押し売りする気も無いし、ただ見て満足してるお客さんを、店に来るなと言うつもりもないから。
だから僕は彼が来るだけで、それだけで良いんだ。
僕は彼を恋愛対象として見ているんだと気付いた時、本当に隠さなきゃいけないものは、これだったと思った。
今まで人の中に居ようとしなかったし、人について知ろうともして来なかった。
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