一章 Voice・本編

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 歌っているもんだから返事はできないものの、部員達も笑顔で応える。 (すごく居心地いい……)  初めて来た練習の場なのに、しかも無理矢理連れてこられたというのに俺は、もうずっと前からここにいたようなそんな所属感を味わっていた。  俺が逃げ出さないと分かると響は手を離し、そのまま部員達相手に指揮というか指導をし始めた。  そして、練習が一段階落ち着いた所で、指揮壇から降り 「どうだ? やる気、出たか?」  と響が聞いてきた。 「……いや」  俺が言うと 「強情だな。そうは見えなかったけど?」  微笑みながら、そう言った。  確かに俺は聞き惚れていた。  うちの高校の合唱部のレベルが高いのは知っていたが、これほどとは。 「部員が納得しないだろ? 宮も……」 「響!」 「……響」  そうそう、と響は頷く。 「響。何で、そんな重要な所を俺なんだ?」  俺は聞いた。  正直、断る理由がなくなりつつあった。 (居心地いいあの場所……。俺の声が、生かせる場所……)  俺は子供の頃から、声がいいと言われていた。  歌を歌えば、近所のおじちゃんおばちゃんみんなから誉められていたし、俺自身も凄く楽しかったのも覚えている。 (でも、歌は……)     
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