一章 Voice・本編

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 と取り繕うように言うと、 「『神の耳』っていうのも頷けるよね」  他の女子も乗ってきた。 「言っていることも的確だし」 「なにより……」  女子達はそこで顔を見合わせた。 「かっこいいしねー!」  きゃっきゃうふふと声を揃えて言う。  確かに響は、顔もいい。そんな元々作りのいい顔なのに、それに輪をかけてにっこりと微笑まれたら、誰もが警戒心緩めてしまう。その上、カリスマ性あって、女子にも男子にも人気。的確に音を捕らえる凄い聴覚もある。指揮台に立って適切な指示を出すとなると、俺より少し小さいながらも一七五㎝の体格がより大きくも逞しくも感じられた。 (天は二物どころか、響にいっぱい才能を与えた)  俺は、密かに思った。 (あ、だからか……)  いっぱい色んなモノを持っているから、無敵に振る舞えるんだ。 (それでこいつには、怖いモノなんかないんだ)  そこで俺はやっと気付いた。  それからも放課後になると響は、教室の前で俺を待ちかまえていた。  響のクラスのHRは、何故いつもうちのクラスより早く終わるのか……と謎に思うくらい、毎日、あいつは俺を廊下で待っていた。
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