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ホームに入って来た和歌山市行の普通電車に飛び乗るなり、たちまち強気のようなものを取り戻しドアーが閉まる寸前にわざわざ顔だけ出しながら、漸く負け惜しみ兼遠吠えを喚き立てる甘やかされ少年。
直後閉まるドアーに頭をゴツンとやられ、他の乗客に笑われていれば世話はない。
「…ホンマもんのアホや。
アホらしゅうて言い返す気にもなれへんわ」
「うん、僕もそう思うよ。
ニッパちゃんがおったら、今頃どつかれ過ぎてババたれとるやろなあのボケ」
「そうなる前に、自分が止めたったらええだけの話なんちゃうか?」
「!
そ、そうだよ!
幾らクソダボでも乱暴しちゃダメ」
「あの、お姉さん…
ワイはクソダボとまでは言うてへんのでっけど…」
「大丈夫、ニッパちゃんは無闇に暴力を振るうような子ではありませんよ。
相手がババ垂れるまでどつき回すような事は…
…滅多にありませんよお姉さん」
「何やねん今の間は?
それに、滅多にて自分…」
甘やかされ少年の馬鹿さ加減に心底呆れながら、いつの間にか自然に漫才をしている関西弁の少年と第三の少年。
そんな2人を苦笑しながら諭す彼女。
関西圏で口にしたら十中八九ろくなことにならない禁句…
バカ
…を面と向かって言われたのにもかかわらず、甘やかされ少年を相手にする気すら失せてしまった事からも、それは誰が見ても明らかであった。
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