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「お待たせしました」
「お願いします」
「確認いたしますので、お待ちください」
窓口に1枚の書類が差し出される。
左上には「婚姻届」と書かれていた。
しかし、俺が注目したのはそこではなかった。
夫になる人、の欄だ。
この名前、どこかで・・・
「もしかして・・・橘?」
話しかけられて顔を上げると、やはり見慣れた顔がそこにはあった。
高校の頃のクラスメイトだ。
「久しぶりだな!お前、区役所で働いてたんだな」
「ああ」
たとえ仲良くなくても、昔のクラスメイトに会うとテンションがあがる。
俺は違うが、こいつはそういうタイプらしい。
「なんか昔より男らしくなったなー、昔もそこそこ男らしかったけど」
「なんだよ、それ。それよりお前、結婚するんだな」
「そうなんだよ。1組にいた佐伯って覚えてる?あいつと――」
「悪い、後ろ並んでるから」
「あ、そっか。じゃあ話の続きは同窓会のときにでもするわ」
「え」
同窓会に出席すると言った覚えはないのだが、
そいつは受理証明書を受け取ると、すぐに帰ってしまった。
別に話を聞きたいわけでもないが、
同窓会、すこしだけ顔を出してみようか。
もう7年も経っているし、
あの頃のように俺を嫌う人間もいないだろう。
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