完璧男子に類なし again

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「あ、橘の髪長い」 「ん?どれ」 瀬戸の後ろからスマホを覗き見る。 20歳の頃の俺が写っていた。 「あーそれ、大学のときのだわ」 「こんなに長くて、邪魔じゃなかった?」 「邪魔だった。すぐ切ったし」 「そうだよね」 瀬戸は笑いながら、画面を切り替えていく。 その後姿を見ながら、俺は本棚に手を伸ばした。 「保育所保育ししん・・・なんだそりゃ。保父の勉強って難しいんだな」 「そうだね、高校までとは全然違う勉強だったから」 「お前の成績だったら、医者とか弁護士とか、もっと凄い職業になれたんじゃないのか?」 「無理だよ。学ぶにしても経済的に無理だったから」 「・・・そうか」 俺たちは互いの知らない7年間を埋めていた。 瀬戸は俺のスマホで画像を見ているし、 俺は瀬戸の部屋を探索している。 「あ」 瀬戸が声を上げると同時に、振動音が聞こえた。 ・・・着信か? 「橘、電話」 受け取って画面を見る。 沙綾だ。 「もしもし」 『あ、大悟?やっと繋がったー昨日からずっとかけてたんだよ』 「そうか、悪い」 『今どこ?』 「今?」 無意識に瀬戸の方を見ると、 ちらちらとこっちを見ていた。 やはり、気になるんだろうな。 「今、友達の家」 『え?大悟、友達いたの?』     
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