完璧男子に類なし again

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「友達っつーか、昔のクラスメイト。同窓会の後体調崩したっていうから、看病してるんだよ」 『へーそうなんだ』 「終わったら・・・」 『うん』 「終わったら、帰るから」 ―帰る 口に出しただけで、胸が締め付けられる。 苦しい。 『わかった。じゃあ家で待ってるね』 「・・・ああ」 通話を切る。 スマホを瀬戸に差し出したけど、瀬戸は受け取らない。 「瀬戸、いいぞ、見て」 「・・・いい」 明らかに元気がなくなっている瀬戸。 でも、今の俺には何も言えなかった。 沙綾を選ぶことも。 瀬戸を選ぶことも。 どちらも、できない。 「じゃあ、長居して悪かったな」 「ううん、全然」 少し動けるようになった瀬戸は、 俺を玄関まで見送ってくれた。 沙綾の電話の1件以来、まったく元気がないけど。 「あ、橘!」 「ん?」 「えっと、その・・・」 「・・・・瀬戸」 しどろもどろになっている瀬戸の頭を、 くしゃくしゃと撫でる。 「また・・・な、瀬戸」 その言葉を受けて、瀬戸は少し微笑んだ。 「うん・・・・・・また」 家路へとつく。 沙綾の待っている家へと向かう。 そして俺は、瀬戸を蹂躙したこの手で、 沙綾に触れるんだ。 最低な、人間だ。 でも、沙綾も瀬戸も失いたくない。 答えは出すから。 それまでの罰なら受けるから、 だからどうか、 このまま堕ちたままで・・・いさせてくれ。
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