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現に、俺の陰口を叩いていたあいつが、あんな態度だったんだから。
・・・とは思った。思った、が・・・
「あ、懐かしいー。橘くんじゃん」
「すごーい、大人になってるー」
なんだ、この変わり様は。
お酒が入っているせいもあるのだろうが、
その場にいる誰もがにこやかな笑顔で、歓迎モードだった。
「ほら、飲めよ」
「悪い」
あの時区役所に来たやつが、ビールを注いでくれる。
それを一気に飲み干した。
「へー橘って、結構酒強いんだな」
「そこそこ。弱くはない」
話をしながら、その場にいる人間を一人一人見る。
あいつは・・・来ていないな。
ホッとした反面、少しだけ残念だった。
「ひょっとしてお前、瀬戸を探してるのか?」
「え?」
「あいつ、仕事の後に来るって行ってたぜ」
来ることは来るのか。
「お前、瀬戸のこと目の敵にしてたもんな」
「別にそういうわけじゃない」
「嘘つくなって。あいつのこと、妬んでたんだろ?瀬戸、頭よかったもんなー」
「違うって」
・・・妬んでいた、か。
はじめはそうだった。
俺よりも頭がよくて、人に好かれて・・・
なんでも出来るあいつが、妬ましかった。
だけど、俺は・・・
「あ、瀬戸くんだー!」
店中に響くような声で、クラスメイトが叫ぶ。
無意識に、その方向を見てしまった。
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