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手が、震える。
ドアに伸びそうになる右手を、必死に左手で押さえる。
ダメだ。
開けちゃ、ダメだ。
「・・・橘」
呼ぶな、瀬戸。
「橘!」
「・・・っ」
痺れたように、何もかもが真っ白になった。
ドアが勢いよく開かれる。
お互いの姿が見えた刹那、
貪るように、口付けを交わした。
「ん、はあ・・・んむ、んんっ、たち、ばな・・・っ」
「せ、と・・・んん、っ、瀬戸、瀬戸・・・瀬戸!」
俺が、自分の手でドアを開けたんだ。
瀬戸を・・・求めたんだ。
「はあ、もっと、ん、もっと呼んで・・・あ、む・・・っ」
「ふ、っ、瀬戸、瀬戸・・・んん、はぁ、瀬戸・・・」
「橘、んっ、た、ちばな・・・っ、んん・・・ふ」
「あ、んん・・・っふ、く、あ」
離れたくない一心で、舌を絡めあう。
7年間を埋めるように、唇を重ねる。
何も考えずに、ただ、お互いを・・・
「は・・・あ、ずっと、ずっと・・・んっ、こうしたかった」
「・・・瀬戸」
「7年間ずっと、ん、橘が・・・忘れられなかった」
「俺、だって・・・」
「・・・橘」
もう一度、唇を触れ合わせようとしたそのとき、
遠くから俺たちを呼ぶ声が聞こえた。
「・・・俺、ちょっと行ってくる」
「・・・え?」
「俺たちはもう帰るって言って、荷物持ってくるから、ここで待ってて」
「瀬戸――」
無意識に、手が瀬戸の服を掴んでいた。
「た、橘?・・・っ」
瀬戸は笑顔でその手を外すと、
先っぽを口に、含んだ。
「ん、ふ・・・んん」
指二本の先に、瀬戸の舌が触れる。
すごく、熱い。
赤らめた顔で指をしゃぶられると、
別のことをされているような錯覚に陥る。
「あふ・・・んっ、早く・・・この指で触って・・・ほしい」
「・・・・・・っ」
ごくり、と喉が鳴る。
目の前の瀬戸があまりにもいやらしすぎて、
何も、考えられなかった。
「・・・ふぅ、じゃあ、行ってくるね」
「は、早く・・・な」
「うん」
瀬戸は俺の手を解放すると、
トイレを後にした。
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