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保健室のドアを開けると、
中の女性がこちらを見た。
「あら、堀江先生。どうしたの?」
「割れたガラスに触れてしまって。絆創膏を頂戴したいのですが」
「いいわよ。消毒もしてあげるから、こっちにいらっしゃい」
「申し訳ありません。望月先生」
頭を下げ、望月先生の前の椅子に座る。
俺よりもずいぶん年上のはずなのに、
そのしなやかなスタイルに思わず目が行ってしまう。
男子生徒の憧れの的という噂は、事実のようだ。
「なあに?」
「いえ、その・・・望月先生は、この学校に勤めてどれくらい経ちますか?」
「そうねえ、15年くらいかしら。・・・逆算して年齢出さないでよ」
「出しません」
冷静に受け答えると、望月先生はクスッと笑う。
そして俺の指に濡れた脱脂綿を当てた。
「堀江先生もクールビューティーになっちゃって。来た頃とは大違い」
「6年くらい経ちますから」
「・・・あのときのこと、思い出すことある?」
「もうほとんど覚えていません」
「そっか。それならよかった。経過良好ね」
綺麗な指が、俺の人差し指に絆創膏を巻く。
「はい、オッケー。化学の先生は危険なものいっぱい扱うんだから、注意してね」
「ありがとうございました」
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