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化学実験室へ入ると、準備室の前に藤原が立っていた。
俺を見て、笑顔になる。
「お疲れ様です。お待ちしていました」
「・・・お疲れ様です」
実験室のドアを閉める。
「藤原先生、何の用でしょうか」
「先日は大事な打ち合わせが邪魔されてしまったので、その続きを」
「その打ち合わせはもう必要ありません。ですので、直ちに消去してください」
「何を?」
「私がいない隙に勝手に登録した、私の携帯電話の番号とアドレスです」
そう、こいつは俺にメールを送ってきた。
化学実験室で待っていると。
そのときに疑問が生じた。
なぜ、俺の連絡先を知っているのか、と。
考えられる可能性はひとつ。
先日、こいつが準備室でひとりきりになったとき、俺の携帯電話に触ったのだ。
どこまでもずるがしこい男だ。
「嫌ですよ。そうしたら連絡できなくなるじゃないですか」
「学校以外で連絡を取り合うことはありません」
「あります」
「ありません」
「あります。たとえば・・・あなたを抱きたくなったときとか」
「その場合は他の方で性欲処理をなさってください」
「だめです」
そう言って藤原は、突然床に膝をつく。
そして・・・俺の手を握った。
突然の行動に、身体が震えた。
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