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「すみません、遅くなりまして」
僕が待ち合わせ場所である藍染学園の正門で待って暫くすると、学園の敷地内から人影が出て来るのが見えた。
その人影はまだ30も満たない様な若い男性で、明るい茶の髪にピシッと決めた黒のスーツを身に纏っている。
背は少し低いが見た目ではしっかりしていそうな人だなぁと思いながら、僕はその男性に「いえいえ」と言って軽く両手を振った。
「先生もご多忙でしょうから全然大丈夫ですよ」
僕は男性に対して屈託の無い笑顔で笑う。
するとその男性も安心した様に笑い返して「そう言って下さると有難いです」と僕の方に右手を差し出して来た。
握手という意味だろう。
そう解釈した僕は自身も右手を出して彼の手を優しく握った。
彼は「これから宜しくお願いしますね」と言って静かに手を離すと、一方で忘れていたかの様に慌てて自分の名前を名乗り出す。
「申し遅れました。私、1年学年主任の嘉川(カガワ)と申します」
「貴方は綾小路さんで間違い無いですよね」と確認を取る嘉川さんに対して僕は二回首を縦に振って「はい」と答えた。
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