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「蒼野、クラスに戻って。」
スカートをまとめてすっくと立つ。…ダルそうな目が、真っ直ぐにこちらを見上げる。そして、脱力したように鞄へ抱き付くと、
「オレやり方しらねぇ~~~」
長い息を吐きながら目を閉じた。だらしなく広がった黒髪が紺の鞄に馴染む。
溜め息をつきたいのはこっちの方だ。白い目で蒼野を見る。この怠け者がまた何か言い出す前に、私は一方的に話し出した。
「今まで散々サボってたんだから当日くらいは商品運び、客寄せ、ヘルプ、何でもいいからやって。みんなカンカンだよ。少しくらいクラスに貢献しないと駄目。分かってる?蒼野。返事は?」
腰に手を当てての説教染みた言葉に、彼は分かり易く眉を寄せ顔を曇らせている。
「なんだよ…戻ったらボコられんじゃん」
とても小さい声で呟いた。
「今日もサボってるのが一番いけないんだよ!一緒に謝るくらいはしてあげるから!」
「えー…」
鞄をゆっくり肩にかけ、のろのろと起き上がった蒼野だったが、一瞬ぐらついて「おわっ…」と低い声を上げる。
「蒼野!しっかりして!」
厳しく叱咤すると体勢を整えて、ちゃんと階段へ向かって歩き出す。
「はい!もっとキビキビと!早く!」
私の指示に煩そうに耳を塞ぎ、頭一つ分抜けた背を不安定に揺らしながら先を小走りに急いでいく。
細いシルエットに不安を覚えながら、私も爽健美茶を拾って後を追い走り出した。
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