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5
夕暮れ。オレンジ色に染まった空を雲がゆっくりと流れていく。
その夕日を遮る木陰に、すやすやと寝息をたてて眠る一人の青年の姿があった。
ふと彼の頭の上に影が差す。
「ん……」
目を開けてみると、目の前には緑色の髪の女がいた。
「…」
―――…夢か……――。
「おいこら!夢じゃないぞ!」
コツンと頭を叩かれた。無理やり起こされた。なんだこの女は。
「んだよ…人が気持ちよく寝ているところを」
「スカウトしにきました」
「ったく」
しつけぇ、と上半身を起こしながら、ウツギは頭をガリガリと掻いた。
「ほんとに何で俺のことストーカーしてるワケ?」
「ストっ…!?ストーカーじゃないわよ!ただ、あなたは企画部にとって使える、と思ったから、誘ってるだけ」
「だけなら他の奴でもいーんじゃね?」
「いいや」
「はぁ?」
「これは直感だけど、あなたからは才能を感じる」
「はぁー??」
ウツギが雑にベンチに座りながら、片眉を上げる。いくらなんでもこの女、しつこい。
「断じて嫌だね。そろそろ学生課に被害届出すぞ」
「心外。っていうかウツギくん、忙しい、忙しいって言っておいて、大体いつもここで寝てるじゃない。暇じゃん」
「暇じゃねーよ…俺だって出席日数考えて授業出て…」
はた、とそこでウツギは言葉を紡ぐのを止めて目を丸くした。
はて。
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