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「ん?どしたの?」
「やっべぇ…」
突然ウツギがその場で頭を抱えだした。状況は分からないが、何か深刻そうな様子だ。
「ど、どうし…」
「レ……ト…」
「は?」
「レポートの課題、聞くの忘れてた…」
「はぁ?」
ウツギは目の前で項垂れている。そんなにやばいのだろうか。
「今から聞きに行けばいいじゃん」
「一時間後提出…」
「…」
「…」
二人の間に沈黙が流れる。
「…救済措置取ってもらえば?」
「無理…だ…出席日数ギリギリだから…」
「…」
目の前で項垂れる青年を、憐みの目で見るエーデ。
嗚呼、青年よ残念に…これに懲りたら、中庭で寝ては授業をサボる日常を止めるんだな…―――。
―――…ん?
その瞬間、ニヤリとエーデが口端を吊り上げた。
「その案件、私に任せてもらえないかしら」
「はぁ!?」
突然の申し出に困惑するウツギ。それもそのはずだ。彼女が何を言っているかなんて、到底理解できないだろう―――そう、彼女の“能力”を知らなければ。
「私の能力…――“高速検索”でレポートを完成させてあげるよ」
「は!?マジかよ!」
ウツギの顔が一気に明るくなる。まるで地獄から救い出されたような顔だ。
しかし、次の瞬間、空を切るように勢いよくエーデが口を開いた。
「ただし」
息を飲む。
「明々後日の“仮面舞踏会”の企画運営、手伝ってくれるなら、ね」
眉をひくつかせるウツギに対し、エーデはこの上ないしたり顔で彼を見下ろしていた。
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