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イベントのことを口にすべきでは無かったと、今更後悔する。
「あ、あはは…」
「明々後日、またなんかやるんでしょう?」
本に目を落としながらではあるが、タマムは話を続けてきた。多分、気を遣っているのだ。彼は誰にでも優しくしてしまう性格なのだ。
「は、はい!仮面舞踏会っていうの、やるんです。クラシック・クラシックかけて、仮面を着けて、みんなで踊るんです」
「へぇ、クラシック・クラシックで」
それを聞いてタマムは顔を上げた。顔には興味の色が示されていた。
クラシック・クラシックとは、この時代=魔歴以前の西暦―つまりクラシック―におけるクラシック曲。つまり、クラシックにおけるクラシック曲のことである。
「それは、少し面白そうだね」
「本当ですか!?」
エーデの顔が、ぱぁっと明るくなる。憧れの人にやっと少し自分の活動を認めてもらえたようで、嬉しかった。
「よければ先輩も来てくださいよ」
もし来てくれたら、その時は勇気を出して、一緒に踊ってもらおう。そんなことを考えていた。しかし、
「ごめん、明々後日には先約が」
困ったような笑顔で返されてしまっては、もう何も言えなかった。
「そ、そうなんですか…じゃあ、仕方ないです」
「ごめんね。ところで、クラシック・クラシック、エーデちゃん好きなの?」
「えっ、いや、好き…ですけど、なんていうか、聴くのは好きっていうか、詳しくは無いです」
「そうなんだ。いや、どんな曲かけるのかなぁと思って」
「えーっと、シュトラウスの春の声とか、ですかね」
「いいね。有名どころって感じ」
「クラシック・クラシックに馴染みのない人でも、少しでも聞いたことのある曲がいいかなと思って」
「うんうん」
先輩は柔らかい笑顔で話を聞いてくれる。どうやらこの話には関心が深そうだ。
「いやぁ、音楽の話できる人って、中々いないんだよねぇ」
「そうですか?」
「うん。比較的、この学科には話せる人多いけどね。そうだ、それこそメヒシバさんとかクラシック・クラシック好きだよね」
ピシリ。メヒシバ…――先輩、私その人と冷戦状態にあるんです…。
「よくあの子とクラシック・クラシックについて話していたんだけど、最近、なんか避けられているみたいな気がするんだよね」
「えっ、そうなんですか」
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