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桜がまだ咲き誇る季節、
田中鈴は、大曾根部長の着任挨拶を見た
その瞬間に恋に落ちた。
大きな身長と、広い背中。
シワ一つない、濃紺のスーツ。
「大阪事業所からこの度、
営業部に異動となりました、
大曾根翔です。よろしくお願いします」
まばらな拍手が6Fに響き渡った。
鈴は何を考えるでもなく、
これから上司になる大曾根をじっと見つめた。
すると、ふいに、大曾根部長と視線が交わった。
慌てて会釈をする。
大曾根部長は驚きとはにかみが混じった表情で、
会釈を返してくれた。
笑うと少しだけ、部長の目じりにしわが入った。
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