見せろ! 誠意! 謝罪戦士ゴメンナー

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「あ、今朝の」 「思いだしたか」  確か今朝の八時ぐらいにきて弁当を買っていった客だ。いや、どんぶりだったか。 「はい」 「その割りには態度に表れていないじゃないか」 「いや、その」  なにか失礼なことをしただろうか。青年は今朝のことを振り返ってみるも、それらしき行動に覚えはなかった。 「ふん。これだから最近の若いもんは。いいだろう。思いださせてやる。今朝、わしはここで昼飯用に麻婆丼を買った。ご飯に麻婆豆腐をのっけたやつじゃ。そして、あんたはこう聞いたな? お箸とスプーン、どちらにしますか? と」  老人の言に間違いはないだろう。どんぶりなどの場合、そう尋ねるマニュアルがあるのだ。 「わしはスプーンを選んだ。なのに、あんたは箸を入れた。わしはそのことに対し、文句を言いにきたんじゃ!」  入れ歯をカパカパさせながら、老人はバシバシとレジカウンターを叩いた。よほど興奮しているのか目も血走っている。
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