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ポチッとな。男はラジカセのスイッチを押し、ウホンと咳払いを一つし、大きく息を吸った。
「では、答えて進ぜよう! この世にトラブルあれど、謝罪なし。怒りが残り、天地が騒ぐ。だれが呼んだか解決の使者。ラジカセ片手に今日も街行く人に代わり、お詫びする。謝罪戦士ゴメンナー。ここに見参!!」
無駄に長い口上を終え、ゴメンナーはドヤ顔を決める。ぶん殴りたい衝動に駆られる顔であった。
「で、ゴメンナーさんとやら。なに用かな? 見てのとおり、わしらは今とりこんでおるじゃが」
迷惑そうな口調で老人は告げ、青年のほうをチラと見る。
「あんたの知りあいかなんかか?」
「違いますよ!」
青年はオーバー気味にかぶりを振る。あんな変態が知りあいだなんて冗談じゃない。
「ふむ。本当か?」
訝しがる老人にゴメンナーがすかさず割りこんだ。
「案ずるな、ご老人。その店員とは、まったくの無関係だ。俺はただ謝りにきただけだ」
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