その矢印の向かう先

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[22:08]コンビニ店員 鈴木の場合② 今日もダメか。 なんでもいいから一言、声を掛けてくれたらあとはこっちのペースで進められるのに。さっきじっと見つめられたときは来るかと思ったけど、何もなく袋を受け取り店を出ていったので、ただの勘違いだった。 うまくいかない。やっぱりあれだけの美人は自分からは動かないのだろう。となると、自分から動くしかないのだろうけど、それは俺のスタイルではない。 疲れた。そう思ってしまったら終わりだけど、こういう状況が長く続くのは面白くない。いっそのこと、好意を持ってくれている人に甘えるほうが楽だと思ってしまう。 そう考えたときに思い浮かんだのはさっき交代した佐藤さんだった。 高橋さんはクールな美人タイプだけど、佐藤さんはふわっとした可愛いらしいタイプだ。たまにチラチラこちらを見ていることには気付いていた。 男慣れしてなさそうで俺の周りにはいないタイプだから、ほんの少しだけ壁を作っていたけど。でも、疲れているので誰かに癒されたい。 次会うときには少し壁を外してみようかとも思う。それで彼女が少しでも動いたら、たぶんいつもの俺のペースで進められるから。 次会えるのはいつだろうか。あとでシフト表を確認しておこう。
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