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◇
少年と話を交わすようになって、一週間が経った頃。
「お兄ちゃん!」
初めて少年が、自分から俺に声を掛けて来た。
そして俺の方へと走り寄る。
「どうした? 随分と嬉しそうだな」
「うん! お母さんがね、迎えに来てくれたんだ!」
いつもは、俺と別れた後の遅い時間に来るのだと思っていたが、今日は早めのお迎えだったらしい。
「良かったな。気を付けて帰れよ」
「うん。でね……実は今日で、お兄ちゃんとはお別れしなくちゃいけないんだ」
「え……」
それは、正直ショックだった。
少年との触れ合いは、いつも仕事で疲れ切った俺の癒やしだったから。
けれども、悲しい顔で見送ってしまってはいけないと、単純に俺はそう思った。
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