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買い物前の短い時間。
少年との別れは、随分とあっさりしたもののように感じた。
突然の事で、俺はぼんやりとしていたのだろう。
うっかりいつもと同じように、その手にはおかかのおにぎりが握られている。
習慣って怖いな――そんな事を思いながら、おにぎりを棚へと戻した。
「あれ、今日は買わないんですか? おかか」
棚卸をしていた顔馴染みの店員に、そう声を掛けられた。
「ああ、今日は食べてくれる相手がいないんだ」
「相手? でも、最近はいつも店の外の所で、一人で食ってましたよね?」
「え? 一人?」
訝しげに、俺は店の外へと目をやった。
「ん……?」
いつも少年がいた場所に、何やら小さな影が見えた。
「あ、まずい!」
店員が店の外へと飛び出した。
俺も慌てて、その後に付いて行った。
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