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陽から視線を外して、再度歩き始めた。
その時、腕を急に引っ張られて視界がぐらりと揺れた。
「ちょっと……。は……高瀬さん、なんですか?」
「ちょっと付いてきて」
振り返ったわたしに、陽は顔を近付けてそう言うと、掴んでいた腕をそのまま引っ張って、さっきまでいた資料室に連れてきた。
わたしをドアを背に立たせると、陽はわたしの顔の両脇に手を付く。
なんで連れ込まれたのかわからなくて、電気が消えたままの薄暗い空間に浮かぶ、すぐ目の前の端正な顔を睨み付けた。
「……なに?」
「だって、こういう所じゃないと、美亜ちゃんと話してくれないじゃん」
「どういう意味?」
「人前では、すげー他人行儀じゃん」
「そらそうでしょ。わたしにとって、陽は先輩なんだから」
「まぁ、それはそうだけど」
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